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広場と港街の中間辺り、画家と剣士と学者の家。
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~What the eye projects...?~【大切な贈り物】


僕が路地に座っていた日以来、幾つものことを僕は彼に教わった…

「シェリス…君が学校で使っていたナイフを今も持っているかな…?」
持っていない訳が無い。
両親からの贈り物。
初めての贈り物。
家出した自分が生きていく為の力。
最も大事な宝物――――
「えぇ…もちろん…でも、それがどうかしたのですか?」
「ん…ちょっと見せてくれないか…」
僕は一度頷くと、彼の机の上にナイフを置いた。
エメラルドが鞘に収まったナイフ。
すると、彼は静かに立ち上がり本棚の分厚い辞典を取り出した。
パラパラパラ――――…
「ふぅ…む…」
彼は辞典のページを探っていた。
難しい表情で慎重にめくっているようだった。
僕は辞典を覗き込んだ。
そこに書いてある細かな字は僕には到底読み取れなかった。
判るのは写真だけ…
こんな辞典を愛用しているなんて、さすがは学者といったところか。

「シェリス…この緑の石はエメラルドといってね…
 君の誕生日、そう5月の誕生石なんだよ?
 宝石言葉は愛・幸福。
 パワーストーンだと霊的な解放、意識の転換をもたらすという意味を持つ。」

「エメラルド…?どっちの石が?
 この透き通った方?」
鞘には石が二石埋まっている。
両方とも緑色の石だ。

「上の方。
 エメラルドは宝石の女王、傷が無い物は100万に1個とも言われる。
 両親は君に幸福になって欲しいと願いを込めたのだろうね……」

そんな…まさか…
僕には信じられるはずもなかった。
僕をバカにした両親が、幼い僕へ願いを込めた贈り物をしていただなんて…

「そうだ!シェリス、これをあげよう…
 …これは5月19日の誕生石ラピス・ラズリ…
 ほら…君の誕生日、5月19日だったろ?」
僕の首にかけられたソレ。
ラピスの原石のネックレス。
鳥の形をした銀細工の台座に収まっている…
鳥というのは、どうやら平和の象徴・鳩らしい。
でもその鳩の足のほうは一枚の羽が象られていた…
僕にはカイルが何故、これを託したのか知る由もなかった。

カイルに一礼をすると、僕は部屋を後にした…
そして、僕の部屋に戻って、巾着にネックレスを入れて、
握り締めながら、眠りについた。
色んな考えでまた頭が埋まっていった…

どうして、両親はあんな仕打ちを…?
私が魔力を失ったから…?
では、何で無くなったの…?

カイルは何故ネックレスをくれたの…?
いつか、聞いてみよう………

…結局、寝ることが出来なくて、
僕は廊下に出た…
時間は真夜中の12時を過ぎ、街は静寂と妖しさを帯びていた…

第五章 【無数の絵画】


しばらくして、地下室に迷い込んだ。
地下室には無数の絵画があった…
油彩…
水彩…クロッキー…デッサン…
指を指しながら僕は言った。
人物画…風景画…抽象画…
ともかく、いろいろな種類の絵。
無数の絵画達が僕を迎えた。
彼は絵も得意だった。研究で描いたりするからだろう…
彼の机や石の標本もあることから、研究室でもあるのだろう。


そのなかの細い通路を行くと、一際大きな絵画が眼前に飛び込んできた。

微笑んで、髪の長い女性が星空の下で天に祈っている絵。
死者への祈りにも見え、生まれてくる子供への祈りにも見え、
不思議な印象をもたらす絵。
一枚だけその空虚な灰色の部屋に孤立していて、妙な感じがした。
この絵は宝石の粉で描かれていた。砂絵と同じようなものだ。
だが、そのクオリティは砂絵の比ではない。


そっ…
触れてはいけないと思いつつも触れてみる。
保護してあるプラスチックの向こうで水晶の屑が少しだけ落ちた。


星空はラピスとサファイア…セレスチン、オパール。
女性の髪はスモーキークオーツとパイライト。
女性の指輪はアクアマリン…
緑の瞳は…えぇと……







「燐銅ウラン石…英名トーバナイト。」

「カイル!!」

考える僕の背後に、いつのまにかカイルは立っていた。

「…トーバナイト…って、僕の名字…」
「そう。実は石の名前なんだ。
君の名字の由来は…――わからないがね。」

カイルは言いかけて、口を濁した。
二人の合間に僅かな沈黙が流れた。
あまり捨てた名字に固執したくなかった僕は、すぐ話題を変えた。

「…そ、そう。…カイルって絵が上手ですね」
「そうかな…上手くなんかないよ…本業じゃないしさ。」
「そんなことないです!この絵も凄く巧いですし…
 そういえば、この絵もそうですが、
何故、笑顔の絵が多いのですか?」

…一瞬、彼の動きが止まった。
躊躇し、しばらく黙った後、はっきりとした口調で答えた。

「絵は心を表す。
 悲しければ、色彩が少なくなる。
 怒ってるとき、線が激しくなる。
 楽しいとき、色も鮮やかになる。
 創作物全てに言える事だけどね。
 笑顔は僕の理想で、今の気持ちなんだよ…」

「あの日雨の中、君は泣いていた。
 僕が見た時、死んでしまうかと思った…
 だから、僕は家に君を連れてきたときに
笑って励ましたんだ…笑顔にはそれだけの力がある。」


「だから、もう泣くな、シェリス。
 笑顔は周囲の人を和ませる。
 そして君自身の力にもなる……
 どうか笑顔で…
 僕は…誰の涙も見たくない……」




そう言うと、彼は振り返った。
「さぁ…もう3時を回ったところだ…
 長話すまなかったね…
部屋に戻っておやすみ…」

それ以来、僕は笑顔を出来るだけ絶やさないことを誓った。
悲しみを癒してくれた笑顔を…


第六章【誓約】、第七章【偽りの笑顔】、終章【瞳に映る星】に関しては
執筆目途がたっておりません。ご了承下さい。
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