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広場と港街の中間辺り、画家と剣士と学者の家。
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~What the eye projects...?~【あの日…あの場所…】


「あの日…僕の部屋は空っぽでしかなかった
夢を見る日なんか一日も無かった…」

「ただ…幼い僕は泣くことしか出来なかった…
 無力で、祖父の元へと駆け寄ったんだ…」

「でも…遅かった。もう冷たくなった人形が横たわっていただけだった
…それだけだった。」

―――――朝
幼い僕は男の腕に抱かれたまま寝ていたつもりだった…
何年ぶりかに味わった安心感に身をゆだねたそのつもりだった…
だが、眼を覚ますと男は消えていた。
男は所詮、現実世界の人間…
人生に干渉してはいけなかったから。
身体を抱え込んだままの体勢で朝を迎えたのだった…

―――――ガチャン!!バンッ!!
ドアが静寂を打ち破るように激しく開いた…

「シェリス…お爺様が死んだ…
さぁ、さっさと着替えて出てくるんだ!!
早く…早くしろっ!!
くっ…お前なんかに時間をとらせてるわけにはいかぬのだ…
私は先に行く…お前も早く来い…一分一秒でも遅れるな!いいな。」

「…お父…様?」

先日の態度とは豹変していた父に驚きを隠せなかった。
…魔力があった僕。
突如消えた僕の力…
失った祖父…
どうして…何で…
感情が入り混じってパニックを起こしていた。

涙をこらえながら祖父の部屋まで疾走した…
ドアを開けると…もうそこに両親の姿は無かった。
横たわる人形だけだった…
泣く声すら出てこなかった…
「お爺様…?ねぇ…ねてるの?」
頬にそっ…と触れてみた…
冷たさが…心までをも凍結させ…
僕はその場に崩れ落ちた…

「…なんで
…わたしはどうすればいいの…
 おしえて…おじい…さま…
ねぇ…私は…わ…たしは…―――――――」

…全てが星と化したことがわかった瞬間だった。

「数年後僕は家を出たんです。
 親が…周囲の目がかわっていって
 僕の心は限界でした…
 多分13か14くらいの歳でしょう…もっと若いかもしれませんね
 出るに伴い、僕は一人称を「私」から「僕」にしました。
 …周囲に“シェリス”だと気づかれてはきっと連れ戻すに違いないし。
 トーバナイトの名を口頭で名乗ることも辞め…。」

「ナイフを使った武術には幸い長けていたから…
 独りでも生きていけると思っていたので…。」

その日、僕はあの人に出会った…
人生を変えていくきっかけになったあの人に…

~What the eye projects...?~【雨の路地】


その日はひどい雨が降っていた…
ローブの袖をも濡らす激しすぎる豪雨だった。
その雨は心の中と全く同じで冷たくて、
涙すら雨に混じって流れていった。
そして確実に体温を奪っていた。

何とか食べつないでいた僕の体力も流石に限界で、
足取りもおぼつかないまま木によしかかっている。
パンを一口…また一口と運んでみるも
食欲が失せていく……
……ただパンは一欠片ずつ地に落ちて泥に同化した。
「はっはっ……っあ……はぁはぁ…」
息が切れていた。
声にならない声で、じっと疲労による苦痛に絶えて
誰かの呼ぶ声を求めていた。
その反面…
「いっそのこと死んでしまおうか…」
「何も食べなければ、いずれ死んでしまいますからね…」
と、自問自答で考えが埋まってもいた。

そっ…と目を閉じた。

手に泥で汚れたアスファルトが触れた。
足に降り注ぐ雫を感じた。
薄れ行く意識………


………ス…
ェ…ス……
…ェリス…?
シェリス……

シェリス=トーバナイト…―――――

誰だろう。
僕を呼ぶ声…
聞き覚えのあるその声…

ゆっくりと眼を開く。

「シェリス…。あぁ、やっぱりシェリスだ…
 やっと気が付いたみたいだね。」
人通りの少ないこんな路地で僕に声をかけた人物。

ダッ―――――!!
僕は逃げ出そうとした。
でも体力を失った足は逃げることを許さなかった。
彼は僕の腕を捕らえていた。

「カイル………」
雨に濡れた金色の髪の毛
透き通った深緑の眼 長身の若い男

カイル=フェリード…

僕は確かにその人物を知っていた、
彼の名前も呼んでいた…
僕の家に時々訪れる石の学者だった。

「何故…カイルさんが此処に居るのですか……」
「父様の命令で、僕を連れ戻そうと…?」
僕は潤んだ真っ直ぐな瞳で、彼へ問うた。

「いいや。違うよ…シェリス…
 僕が何故此処に居るのか聞きたいくらいだな…」
彼は笑顔で返事を返した。

「ならば、僕なんか放っておいて下さい…」
強めの語調で彼を突き放そうとして、顔をそむけた。

「放っておく訳には行かないな…?
 君の手もこんなに冷たい。
 お腹も空いただろう…?
 シェリス…僕の家へおいでよ…
さ、立ちあがって?」
「え…ちょっと……待っ…」

そう言うと、そのまま彼は僕の腕を勢いよく引っ張って
反動で僕は立ち上がった。
優しさが凄く暖かかった…

「カイル…有難う……」

彼の背で僕は微笑んだ。そしてしばらく眠った。
求めていた呼び声に導かれて、
彼に事情を話した僕は…
いつのまにかカイルとの生活を送っていた…

雨は降り続くも、ほんの少し雲の切れ目から陽が射していた。
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