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広場と港街の中間辺り、画家と剣士と学者の家。
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~What the eye projects...?~【丘の町】


A gate opens.               門が開く
A morning comes.             朝が来る
It visits, moreover it is melancholy.    憂鬱がまた訪れる
A gate closes and it is .        門が閉じ
Night comes.               夜が来る
  …Disagreeable dream.           …嫌な夢
The star not arriving.         とどかない星
Light of hope and the whole life…      希望と生涯の光…


ようこそいらっしゃいました…
…ああ、そうか。もうこんな時間なのですね…

で、聞きたいこととは?
過去…ということですか。
……では、その本を開いて。
…薬で魔力を補わなければ。
―――――――…はい。景色が浮かんできますよ…
少しだけ…ね。……少しだけ。


海の見える街を進むと見えてくる森に囲まれた丘上の小さな町…
奥へ…そう…噴水や商店街のアーチを抜けて…
住宅地が見えます…でも、まだ向こう。広場も抜けて…。
この町に似つかわしくない大きめの建物が見えてきましたね…
…あれが「魔法学校」、そして、学校と廊下で結ばれているのが…
…僕の忌まわしい記憶を生んだ場所。…僕の実家です。

決して大きい町でも大きな家でもない…
全ては魔法が支配し、君に幻覚を見せているだけ…
……すすり泣く声が聞こえますね?…しかたが無い。
過去を覗かせてさしあげましょう…


~What the eye projects...?~【圧倒的な力】


「うっ…うっ…えぐっ」
魔法学校の奥を進み、回廊を歩く…
すると、廊下にまで響く嗚咽をあげながら泣く声がしていた。


「もう夜も明ける頃だな…
 それにしてもバカでかい家だ。
 シェリスさんはこんなに良い所で育ったのか…
…勝手に潜り込んで捕まりはしないだろうか。」
男は泣き声の方に向かって暗闇が残る屋敷内を進んだ。
辺りの様子に不安感と余計な疑問を抱きながら。

「…おや?」
男が廊下の先を見れば、遥か遠くの方から
銀髪で、青い眼…
男が知るシェリスに、よく似た少女がこちらへ歩いてくるではないか。
「…あの子は、幼きシェリスさん…?」
そう男が不思議さに浸っているうちに、もう少女は目前にまで来ていて
顔をまじまじと見上げていた…。
「…君の名前はなんていうのかな?」
男は少女の目線まで屈みこみ、3・4歳くらいの子に聞いた。
「…わたくち?」
「ん…あぁそうだよ」
「せりる=とぉばないと」
「セリルちゃんか…。(ほぅ…ここはトーバナイト家というのか)」
男はセリルをじっ…と見、セリルは不審そうに男を眺めていた。
「おにいさん…だぁれ?みたことないよ」
「俺は、まぁ記者みたいなものさ…」
「…わるい ひと じゃないんだ。」
何とか誤解を解き、セリルに尋ねた
「“シェリス”って人何処に居るか知らないか?」
「おねえたんは そっちにいないよ。おにいさん おっこちちゃう。
 わたくちが つれていってあげゆ。ゆか あぶないからね」
幻覚に惑わされ、惑わされ、惑わされ…
不法侵入者は魔法に捕らえられる家。
危うく、この男も生贄となるところだった。

「にいたん、こっち。はやく、はやく」
セリルは魔法を多用しながら男を部屋へと導いていった。
夜だけ魔力が緩まる落とし穴の解除、
転々と続いていく光の道標
耳の奥に響くセリルの声…もう姿が見えないほどの速さで。
周囲のライトの増加…等々等々…。
「はぁは…っ…はぁ 無理だぜ…そ…んな速く」
…計り知れないほどの魔法を放つ姿はまさに天賦の才としか言えない程。

すすり泣く声が目の前から聞こえてきた…
「この へや…。じゃあね。 かぎ が ないと まほう でも あかないけど」
「あ…!!」
と男が言うが早いか、セリルは瞬く間に消えてしまった。
男はただ一人、夜の青に染まった廊下に立ち尽くしていた。
「…入ろう。いや…待て。
 鍵がないな。どれ…試しに強引に開きはしないか…」
ドアを見、男はドアノブゆっくり回し…押した。
「くそぅ…やはり鍵が――――」
半分ヤケくそに、ガチャガチャと扉を揺すった。

スウゥゥッ―――――――

「な!!…体がすり抜けた!?」
見ると、男の右手、右足、右半身は完全に貫通してしまっている。
「頭をつっこんでみようか…」

―――――ガンッ!

「…痛ッ!なんだこのドアは!?」
…すると全身がシュレッダーにかけられたかのように室内へ流れ込んだ。
「…へ?」
「…えぅ…誰?」
銀髪の小さな子が、涙目で男を見る。
夜に怯え、男に怯え、親に怯え冷たくなった身体を抱え込んで。
「シェリス。君はシェリスだね?」
男はバランスをたて直し、銀髪の少女に聞いた。
「…ェリス。うん…シェリス=トーバナイトともうします」
立ち上がり、涙を拭い男に礼。
「俺は記者みてぇなもんだ。…オイ、なんで泣いてんだ?」
「…魔法が…少ししか…なくなっちゃ…たの。」
「みんな魔法…つかえるよ。お母様もお父様も…
 お爺様もお婆様も従兄弟も一個下のセリルも…みんな…えぐっ…うっ」
「…」
終始男は無言を決め込んだ。そしてシェリスは延々泣いていた。
男は無言で着ていたマントをシェリスに投げ、抱き寄せて
結わえた銀髪の上から髪をゆっくり撫で下ろした。
そして…朝が来るまで待ち続けた。
涙が闇に溶け込んでいった…


「魔力の無い子なんて、この家に要らないわ」―――薄い緑目、灰の髪の母
「…失せろ。武術だけ上手くたって必要ないだけだ」―――濃青の目、薄紫の白髪の父
「…魔法使いの家系のくせに、
あなた魔法出来ないなんて…本当不運な子ねキャハハ」―――学園生徒の会話
「キッ…サササッ」―――鋭い眼光、避ける祖母

心に刺さるトゲ…抜けない苦しみ。
圧倒的昔の力、今は消え失せ…
その夜が明けてすぐ、味方だった祖父が星になった。
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僕は小さな道を歩いていた。
一陣の冷たい風が頬を通り過ぎた…


―雪上の砂時計―


行き着いた場所はがぁらの雪広場…
子供達が笑い遊ぶ場所。
そして獣人戦争の戦場の一つだった場所。


今は子供達の笑い声が静かに響く…


静かに…




本当に静かに…





「もう戦の跡も無いのですね…」

そう呟いて、僕は眼前を見渡した。
そこにはもう降り積もった粉雪しかなく
そこにはもう踏み荒れた土地と笑いしかなく。


「そういえば、あの日を思い出す…」


雪の中、大切な人を失った…
いや…僕が殺したも同然の人…

………僕は殺人者なのかもしれない。

唯一、好いていた。
今もずっと、ずっと大好きな人…
朽ちていく感触が冷たすぎた…
寒さとも区別がつかなかった…
絵の具のように飛び散っていた紅い雪…
苦しそうな白い吐息…
途切れ途切れに聞こえた声………


「君が…俺を殺したんじゃない…… 君は…強く…生きて…ずっと見守ってるから…」


無理して微笑んだ…何度も微笑んだ…
でも微笑みは返ってこなかった。
返事も…
楽しい日々も…
僕の心の支えも…
何もかも全て…
二つの崩れた身体は雪に埋もれて、しばらく動かなかった…
涙はとめどなく流れた…そして紅い雪に染みていった…


翌日見た光景は、紅い雪など無い、真っ白な雪原だった。


子供が誰も居なくなり、広場には僕一人だけになった。
「今なら…私を許してくれる…?」


獣人も人間もこの場所を紅く染めたことをと思うと、
勝手に涙が溢れて、頬を伝った。
止まることは無かった。
昔と全く同じ状況だった。


この場所に降る粉雪は白い星のようで、
白い砂時計のようで、
貴方との時を戻してくれる気がした…



この指輪、どうかあなたに届いて下さい…
僕は銀色の指輪を空に向かって放り投げた。
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